【多様性の科学】を読んで
以前紹介させていただいた『失敗の科学』の著者マシュー・サイド氏の最新刊。
『失敗の科学』は失敗に対するアプローチの仕方を変えることで、失敗から学びを得ることができる。「失敗は決してネガティブな事ではない」と学んだ。社会人1年目だった当時の私にとって、こんなに心強い言葉はなかった。
さて、この多様性の科学でテーマになっているのはタイトル通り「多様性について」だ。
多様性のないチームと、あるチームの違い
多様性のないチームとはつまり、個人もしくは考え方や価値観、文化的な背景が同じメンバーしかいないチーム。
多様性のあるチームとは、考え方や価値観、異なる文化的背景があるメンバーが集まったチーム。
どちらの方が、良いチームと言えるだろうか。
陸上競技のリレーなどの特定のスキルのみ必要とされる場合は、前者のチームが多いだろう。身体能力が高いとされる黒人のメンバーが揃ったとしても不思議ではない。
しかし、複雑な問題解決に取り組む場合は、多様性のあるチームの方が良い成績を残せることが分かっている。
では、どのようにして多様性のあるチーム作りができるだろうか。著者のマシュー・サイド氏は以下のポイントを挙げる。
・反対意見が出やすいチーム作りをする
→違う価値観や視点を持つ人を敢えてチームに入れたり、まったく別分野に特化した人をチームに入れる事で活性化される。また、ヒエラルキーを気にせず意見を出し合える雰囲気を作ることで、新人などから出やすい斬新なアイデアを検討する事ができる。
・皆から自然と慕われるリーダーの存在
→独断で指示を飛ばし、「リーダーの言う事は絶対」というスタンスのリーダーが居るチームでは、いくら多様性のあるメンバーでもそのメリットは活かされない。上記に述べたように、意見を言いづらくなるからだ。昔の航空業界がまさにそうで、空の上では機長の言うことが絶対だった。30件以上の墜落事故が、副操縦士ら乗組員が機長に進言できずにいたことに起因してるという。
ただし、リーダーの存在はチームにとって欠かせない。なぜならリーダーが居なければ組織全体のバランスが取れない。実際にGoogleが実験的に管理職をなくしたことがあったが、組織が機能せず、約1年で元の組織形態に戻したことがある。
ではどのリーダーが望ましいのか。それは皆から自然と慕われるリーダーである。謙虚で、皆の意見を拒まないリーダーだ。もちろん、様々なリーダー像があり場面によっては、絶対的リーダーが求められることはあるだろうが、チームで問題解決にあたるのならば、謙虚なリーダーが望ましい。
ここでは本書で取り上げられた一部のテーマを紹介した。まだ他にも「個人が多様性を持つためにはどうしたらいいか」「目に見えない盲点をどのように発見し失敗を未然に防ぐか」についてなどが書かれている。自分の視点を広げてくれるヒントになるだろう。